やまぐちめぐみさんという画家の絵をこのこぐま座ブックスWEBマガジンで公開するご縁を得まして、本日公開しました。前後編2回に分けて特集記事をお送りします。
めぐみさんご本人は「絵描き」とおっしゃっていたようですが、当マガジンではあえて「画家」「絵画」と呼びます。
ひとがひとり、生まれて生きて死ぬと、さまざまな人生や時間が重なり、離れ、それぞれの時間が流れてゆくものだなあ、と、しみじみ思います。
前編は、わたし自身の個人的なことを、字数を割いて長文にて書き記すことをお許しください。
わたしは1990年代前半にセツモードセミナーで絵やファッションを学んだ、1971年生まれ今年55歳の女性です。
ですが、同じセツモードセミナー出身で1966年に生まれ2015年9月に亡くなった女性、やまぐちめぐみさんのことは、2023年に偶然出会うまで存じ上げませんでした。
2023年はわたしにとって大変な1年でした。
2月、長く患った末わたしの母が亡くなり、同じ頃わたしの父も寛解が難しいタイプの癌闘病が始まり、同年10月わたしの夫が心不全状態に陥り、医師より
「心不全は寛解しない。投薬により突然倒れる場合もある」
と、とどめを刺すような説明をうけて、わたしはおろおろと絶望していました。
(余談ですが父はその後亡くなり夫はいまも生きています。その話はまた別の機会に)
夫が入院する前日に
「とうぶんおいしいごはんはお預けだから、今日の晩ごはんは外食しよう」
と、ふたりお気に入りのごはん屋さんを予約し、予約時刻までの少しの空き時間に立ち寄った近所の本屋さんで、出会いました。
2023年10月23日初版「やまぐちめぐみ作品集 新装版」に。
書店のその場でぱらぱらとページをめくり、ひとめでその絵を好きになりました。
簡単に言うと、救われたのです。
翌日、入院する夫を病院へ送り届けたあと、すぐまたその本屋さんへ行き、「やまぐちめぐみ作品集 新装版」を購入しました。
紙の書籍におとしこまれ印刷されてわたしの手元までやってきたその絵画たちには、死の影も見えますが、それは同時に生の光でもあるわけです。
ヨーロッパの曇った日のあの感じ、そして夜の風景。
絵の中の女の子や動物たちの、そらさずにまっすぐこちらを見つめてくる、目。
こころのとても深い部分からわきあがる直感に蓋をせず、すくいとれるだけすくいとることを試みる。そしてそのこころの深い部分からの直感を、鮮度が下がらないうちに絵に閉じ込めようとしたのでしょう。
そのむき出しの感受性に、僭越ながら深く共感し感動しました。
やまぐちめぐみさんは、おそらく意識的に
「こころのとても深い部分からわきあがる直感を、隠してとじこめておく蓋」
を、開きっぱなしにする人生を選んだのであろうと、理解できました。
作品集最後部分に掲載されていた文章を読んで、またもや共感しました。
病名ははっきりとは書かれていませんでしたが、わたし自身が持っている免疫の不具合と、やまぐちめぐみさんが患い死に至った免疫の病気が同じものだと、その文章を読んですぐわかりました。
そしてめぐみさんが、夫とお子さんを大阪に残しひとり上京し自分自身の人生をまっとうしたのだということも、その文章で知りました。
めぐみさんとお話ししたことはありませんでしたが、文章を読んで
「そうせざるを得なかったのだな」
と、感じました。
不器用な決心で
「自分自身を生きる」
と決め、ときには健康状態悪化も後回しにし、夢中になってその決意を実行したのであろうと、推測することができました。
もしかしたら、その選択、実行は、無責任だと非難する声もあるかもしれません。
しかし。
昔わたしの母が、
「あなたを産まなければよかった。
大学を出たのに女性には就職も難しい、という社会だった(遠い国の話ではありません。1960~70年代東京ど真ん中の話です)。
結婚しないと女性は生きていけないと周囲からも教えられ、女性の人生はその結婚に左右される。そんな世の中に従った。
あなたは子どもを産まずに自分自身のちからで自由に人生をまっとうしなさい」
と、まだ幼いわたしへ語っていたことを思い出しました。
女性の自立を幼い娘に教えるにしては、あまりに不器用且つ雑すぎる愚痴のような言葉、「幼い娘の存在自体とその女性性、自身の夫との結婚生活をも否定し、幼い娘へ呪いをかける二重拘束の言葉」
を、実の母から手渡された幼い娘であったわたしは、それを受け取り抗いながらも長年握りしめ続け、その呪いを完全に手放すのに苦労しました。
でも、このような言葉を聞いたことのある昭和世代、わたし以外にもいらっしゃるのでは……?
余談ですが、実はうちの母もその後大きなチャレンジをし見事自己実現を果たしたのですが、それはまた別の機会に。
そして現在はさすがにわたしも進歩して、その言葉の「呪い」部分だけを手放すことができ、「愛情」部分だけを受け取ることができていると、自分では思っているのですけれど。
ほんの数十年前、現在と地続きの日本の都市部で、女性が意思と責任を持って本来の自分を活かし、子育ても自己実現もパートナーシップもすべてかなえて生きるということは、なかなかに難しいものであったようです。
女性は男性の下で守られて子育てしながら生きるのがよい。それが幸せ。
少なくとも、わたしの母が結婚し子育てしていた1970年代~1990年ごろまでの日本は、そういう価値観がマジョリティであったと記憶しています。
やまぐちめぐみさんは、やりかたは不器用だったと想像しますが
残された娘へ、わたしの母のような「呪いの言葉」を手渡すということはしなかったように見える、そのひとことに尽きると感じます。
自分自身を活かし自分自身の責任で生きるということを実行したかったのだろう。
そのことを、その書籍の絵と文章から読み取ることができました。
実際には、めぐみさんはもうこの世にいないので、本当のこたえは聞けないのですが。
夫が入院しひとり部屋に残された2023年のわたしは、
やまぐちめぐみさんの作品集を見ながら
孤独とアート、シスターフッド、母と子、パートナーシップ、自立と依存、いなくなったひとと残されたひと……など、さまざまなことを静かに思っていました。
わたしなりに「ほんとうのこたえ」を得たのは少しあと、2024年に父の死を見届けたのちでしたが、そのとき得た「ほんとうのこたえ」をもとに、女性の課題を扱う、この「こぐま座ブックス」を始めました。
そして今回、やまぐちめぐみさんの長女である梅地萌美さんとお話しする機会を得て、そのストーリーをうかがうことができました。
後編はやまぐちめぐみさんの絵画と、梅地萌美さんにうかがったお話をお届けします。
5月14日公開予定です。
〇2026年5月現在購入することができる、やまぐちめぐみさんの作品集
「やまぐちめぐみ作品集 新装版」
ミルブックス
2023年10月23日初版
定価2,000円+税
ISBN978-4-910215-16.7 C0071
〇2026年5月現在、やまぐちめぐみさんの原画を見ることができる場所。
宿、ギャラリー、そしてオンラインショップも。
鳥取 青宿
https://aoyado-inn.com/
ただ好きな時間に、好きなように過ごす旅。
〇高円寺にある「アムレテロン」で5月と7月に原画展が開催されます。
原画の販売もあります。
やまぐちめぐみ原画展 -いつかみたあのこ-
本を読んでた あのこ
花を摘んでた あのこ
目が合うと にゃーと言った あのこ
ほっかむりしてた あのこ
ひなたぼっこしてた あのこ
風とあそんでた あのこ
咲き競ってた あのこ たち
いつかの めぐさん
めぐる季節 あのこ 思い出す
会期
5月 2026年5月9日(土)~ 6月1日(月)
7月 2026年7月11日(土)~ 8月2日(日)
時間 13:00〜19:00 日・祝は18:00まで 5月10日(日)は17:30まで
不定休(おやすみはインスタグラムでご確認ください)
場所 Amleteron(アムレテロン)東京都杉並区高円寺北2-18-10
https://www.instagram.com/amleteron_/
*アムレテロンは、ひとりになってたのしむ店です
*インスタグラム固定投稿「ご来店に関するお願い」を必ずご一読ください